マラソン日本記録を16年ぶりに更新した設樂悠太。
以前、「設樂悠太の練習方法や考え方は常識破り?・・・」という記事で
従来からの慣習や常識、指導者の指導方法を鵜呑みにせず、
自分自身で考えた強化トレーニングのやり方で新記録を樹立したことを
ご紹介していました。
今回は、スポーツ紙の企画インタビューで、
設樂悠太選手独自のトレーニングに対する考え方や
食べ物や嗜好品、レース中に考えていること、
家族との関係など、プライベートなことまでが語られています。
ランナーだけでなく、アスリートにとって、
今までは、常識とされてきたこと、タブーとされてきたことを
自分独自の判断で変えて取り組む。
そして結果を残す。
設樂悠太選手の物事にとらわれない考え方は、
陸上競技だけでなく、いろんなスポーツで
記録が伸び悩んでいる選手自身や指導者の皆さんにとって、
非常に参考になることから、従来の常識やタブーとされていたことと
設楽悠太選手の考え方を比較しながら、ご紹介してみます。
目次
常識破り① 疲れが残るトレーニングはしない
日本新記録樹立後に語って、話題となった「長距離の走り込みはしない」発言。
今回はその発言の真意を語っています。
設楽悠太談:
――30キロ以上は走らない独特の練習法ですね?
「昨年9月のベルリンで40キロ走を2回取り入れたんですけど翌日、体を動かせなかった。それで疲れをためない形にしました」
――全て自身で判断?
「体調を崩したことがあるので高地トレーニングもやらない。走れば自然と筋肉がつくので筋トレもストレッチもしません。験担ぎもルーティンも全くないです」
――15年の世界選手権男子1万メートルで最下位の23位に終わったことが大きな転機に?
「あれから自分と向き合うことの大切さに気付いた。社会人は走れなくなったらクビ。生きていくためには自分がやりたいことをやる。練習も自分に合ったものを選ぶ」
これまでは、自分の限界まで追い込むためのトレーニングが必要。
そのためには、高地トレーニングや筋力トレーニングも取り入れる。
といった考え方がどのスポーツでも当たり前でした。
陸上競技では、瀬古利彦さんを筆頭に「限界まで走り込む」
という、精神主義的トレーニング論がいまだに主流です。
しかし、設楽悠太選手や川内優輝選手の活躍で様相が変わってきました。
設楽悠太、発言する勇気と影響力に感心!
当初、設楽悠太・川内優輝両選手のトレーニングやレースの取り組み方について、
陸連をはじめとする陸上関係者は、疑問や苦言を投げていました。
しかし、
両選手が次々に結果を残し、自分の意見や考え方を
遠慮なく発言することで、広く一般に知れ渡るにつれ、
従来の指導方法で良いのかとという疑問が社会に広がりました。
ランナーに対する愛情あふれる解説で人気の増田明美さん。
増田さんは、オリンピックや世界選手権への出場選手選考や
レースの在り方について、再三、陸連へ辛口の提言をしてきましたが、
目に見える程の改善はなされませんでした。
それがどうでしょう。
設楽悠太選手の新記録樹立や川内優輝選手の活躍で
両選手の自主的な取り組みがマスコミで紹介されるにつけ、
瀬古利彦さんを筆頭に陸連までが、両選手の取り組みを評価するほどに
変わってきました。
自分の考えを勇気をもって発信する。
それを飄々とやる設楽悠太選手が凄い。
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常識破り② 食事編 水は飲みません。飲み物はコーラです。
【従来の常識とタブー】
- アスリートにとって水分補給は不可欠。
- 水やスポーツドリンクはこまめにとる。
- 炭酸飲料水は飲むな!中でもコーラは。
設楽悠太談:
――飲み物は?
「コーラです。水は全く飲まない。冷蔵庫に大量にストックしてます。マラソン前は2週間の禁コーラ」
【従来の常識とタブー】
- ジャンクフードは食べない。
- 糖分は控える。
- レース前は、腹持ちのするものを食べる。
- 野菜をたくさん食べ、肉は極力控える。
――食事には気を使う方ですか?
「こだわりはないです。野菜は食べない。カレーに入っているニンジンとかなら…むき出しの野菜は絶対無理」
――ドリンクなどで栄養を補う?
「全くしない。肉は食べます。あとはお菓子。東京マラソンが終わった後は“じゃがりこ”でした。
甘い物も大好きで和洋両方を重ねて食べても大丈夫」
アスリートにとって、食事管理は重要。
選手の私生活面で、選手も指導者も最も気を付けているのが、体調管理。
体調管理が万全であることが、最高のパフォーマンスを引き出す。
体調管理には、食事での栄養摂取が重要だから、
身体に良いものを摂る。
この考えが常識ですが、
設楽悠太選手は、体調を自分で観察し管理コントロールできるから、
自由は飲食ができるんだろと推測しています。
常識破り③ 集中力がないので回りを見る
【従来の常識とタブー】
- 試合や練習に集中しろ。
- 余計なことは考えるな。
- 前だけ見て走れ。
設楽悠太談:
――レース中は周りの動きなどを見て対応を考えたりする?
「周りは見ますね。集中力がないのでずっと前を見ているわけでもない。たまに沿道を見て“あっ、知り合いいるな”とか思います」
――えっ?そこまで分かるものですか。
「家族が応援に来てると思ってたのでずっと探してました。ちょうど離された時に気付いた。母の声がでかいので一瞬で分かった。凄い支えになります。最後も“1億!”とは言わず“頑張れ〜、まだいける”でした」
自分は「集中力がない」といえるだけでも規格外です。
謙遜するタイプとは見えませんから、本当のことだと思いますが、
飾らずにシレっと話すのも”設楽流”。
常識破り④ シューズは厚底がつかれにくい
昨年のTV番組「陸王」の人気もあり、関心を呼んだシューズ底の厚さ論争。
「厚底シューズ」の人気沸騰でメーカ‐の勢力図も代わった程です。
その火付け役の一人が設楽悠太選手。
従来、陸上競技でシューズに求められていたのは、
「軽く」「底が薄く」「丈夫」であることが常識でした。
設楽悠太談:
――シューズへのこだわりは?
「昔は底が薄いシューズで走っていたけど今は分厚いものに替えた。足への負担が少ないので疲労感が違う。クッション性があって足を置くだけで前に進む感覚
常識を打ち破ったのが海外メーカーのナイキ。
設楽悠太選手が海外レースで履き始め、好成績を連発したことが
引きがねとなり、多くの選手が採用するに至り、
今では入手困難なほどの人気商品になっています。
設楽悠太選手の自由な発想が従来の考えをくつがえした訳です。
まとめ
一見穏やかで頼り無げに見える見た目と言動。
しかし、ハートは勝負師そのもの。
己の能力や適正を見極める「観察眼と洞察力」。
自分に良かれと思ったものを選択する際の「判断力と対応力」。
周囲の声に惑わされず己の信念を貫く「意思の強さ」。
おりしも、日大アメリカンフットボール部の
強圧的な指導体制が社会問題になっています。
もちろん、指導者の指導方法に問題があったことはもちろんですが、
選手たちが指導者のいうことを盲目的に受け入れたきた。
国内での、従来から続く、スポーツの指導の在り方。
「上位下達」「絶対服従」といったスポーツの悪しき風習が
もたらした一面もあります。
設楽悠太選手がトレーニングから食生活まで、
自分で考え、独自の判断で選択する。
選択したことは、徹底して実行する。
設楽悠太選手の取り組みや考え方は、
これからのスポーツ選手や指導者の在り方を
示していると確信しながら、本文を終わります。