井上大仁(ひろと)選手がアジア大会のマラソンで日本人として32年ぶり優勝の快挙を達成しました。
高温多湿のジャカルタで開催されたマラソンは、早朝6時(日本時間8時)からのスタートはで、東京五輪の予行演習になると注目されてしましたが、井上選手と4位の園田隼選手のレース運びは、参考になることが一杯だったでしょう。
この二人の活躍で、過酷な真夏のマラソンでも日本人選手が活躍できることが証明され、
東京五輪のマラソン運営にも、良いお手本になったのではないでしょうか。
そこで今回は、快挙を達成し一躍、東京五輪マラソンの有力候補に名乗りを上げた、
井上大仁選手の覚悟や思い、東京五輪の暑さ対策のエピソードなどをご紹介してみます。
目次
井上大仁選手の男気ある覚悟
今回のアジア大会には、日本マラソンの2大エース、設楽悠太・大迫傑選手ほか、有力選手が、’19年9月の五輪選考会を見据えて、出場を相次ぎ回避する中、井上選手はすぐ挑戦を決め、語った言葉は熱いものでした。
「環境の良いレースで強さは身に付かない、暑さの中で勝負して勝つ」
と出場を打診された井上選手は、即座に出場を決めたそうです。
マラソン選手たちの大半は、2020年の東京五輪に出場することを目的としているのは間違いないでしょう。
ただ東京五輪の出場権を獲得するには、日本陸連が定めたマラソングランドチャンピョンシップ(MGC)に出場して、代表枠を獲得する必要が有ります。
しかし、MGCに出場するにも、選考レースで一定の基準をクリアするというハードルがあります。
※MGCの選考基準を詳しく知りたい方は、こちらの日本陸上競技連盟公式サイトをご覧ください。
マラソンのことは、こちらのマラソン・ランニングイベントは花盛り・・・・熱気ムンムン!の記事でも書いています。よろしければこの記事もお読みください。
酷暑のアジア大会に出た理由
井上選手は、2月の東京マラソンで日本新を出した設楽悠太選手に次ぐ2位でしたが、2:06:54の日本歴代4位の好記録を出して、当然、MGCの出場権は獲得しています。
そんな井上選手がアジア大会に出場を決めた理由は、酷暑が予想される東京五輪マラソンの予行演習として、同じ高温多湿のジャカルタで開催されるアジア大会で、実際に酷暑のマラソンを体験するためでした。
ただ、「アジア大会はテストケースとしてでるのではなく、勝つためにでる」
MGCの出場権は既にもっているにも関わらず、あえて過酷なレースに出場する。
あくまでも、東京五輪に出場して、メダルを獲得する、そのために灼熱下のマラソンを
体験したい。
なんとも、頼もしく、男気にあふれた心意気ではありませんか。
イヤー、本当にアッパレな覚悟です。
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酷暑のマラソンに周到な準備
TVをご覧になっていた方は、井上選手が飲料ボトルを捨てず、握ったまま走っている姿を
みて、”いつもと違うな”と不思議に思われませんでしたか?
給水ポイントで、ボトルをとった、井上・園田の両選手が、並走する外国人選手にボトルを渡す姿を見て、筆者は、両選手とも”なんて素晴らしいスポーツマンシップの持ち主”だと感心してみていました。
ところが、ボトルを受け取った外国人選手は、飲み終えると、ボトルを捨てずに井上選手に返し、井上選手は何事もなかったように、そのボトルを受け取り、握ったまま、走っていました。
いつものレースでは、飲んでしまったボトルは、すぐに捨てるのは当たり前だと思っていたので、”井上選手はなぜすぐ、捨てないんだ?”と、疑問に思っていたら、暑さ対策のためだということを後で知りました。
酷暑の東京五輪を想定して、同じ環境のジャカルタでは、暑さ対策の効果を測定する目的で、たくさんの対策が取られていました。
給水では、スペシャルドリンクと身体にかけるためのボトルを用意。
さらに体温上昇を抑えるために、自らの発案で保冷剤を手に握り、
ペットボトルも”ぎりぎりまで身体を冷やすため"に握って走ったということです。
ほかにも、風通しを良くするためにシャツに穴をあけたり、30㌔以降の給水ポイントでは”日差し除けの帽子を給水セット”につけたりといろんな取り組みがされていました。
井上選手曰く:
「保冷材は効果はあったが、持ちすぎて、足がつりそうになった。まだまだ。改善の余地がある」
「帽子は、かえって熱くなったので脱いでしまった」
など、体験したものでしか分からない、貴重な意見を語っていました。
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まとめ
井上大仁選手は、今回のアジア大会マラソンが初優勝です。
これまでは、日本歴代4位の好記録を持ちながら、大迫傑・設楽悠太両エースの陰に隠れた存在であったため、マラソンファン以外からは、それほど、注目を集めていませんでした。
ところが、今回の優勝で一気に注目を集め、東京五輪マラソン期待のエース3人衆の一角として、認知されたことでしょう。
なんといっても、「世界と勝負するために、どんな条件下でも対応できるようにしたい」
とあえて、厳しい環境を選び、有言実行で優勝を果たす。
長崎の山と海に囲まれた自然豊かに町で育ち、いまだ故郷の企業チームで働く25歳の若者、
井上大仁選手。
海外勢を相手にした夏マラソンで得た自信で、さらに成長して活躍する姿を見せてくれるでしょう。
なんとも、小気味よい快挙に拍手を送りながら、終わります。