スポーツチームにおいて、監督の役割は、種目やチームの規模によって、異なるケースも多く、一概に断定できませんが、
現場の責任者で最終意思決定者であることは共通でしょう。
種目やチーム事情によって監督の役割や立ち位置も違っており、
各スポーツチームの監督を比較してみるとその違いが面白く、
ゲームの勝ち負けにも増して、興味深いものです。
また監督の指導方法や人心掌握術は、会社や家庭での人間関係つくりにも参考になります。
そこで、各スポーツ種目における監督やコーチの役割分担などをご紹介します。
目次
■ ユニークなチーム管理、話題のバレーボール中田久美監督
スポーツチームの監督といっても、競技ごとに役割は違っています。
また、監督の考えによって、指導方針や試合での立ち位置が変わってきます。
現在、バレーボールのグラチャンバレーで熱戦が展開されています。
全日本の監督に、中田久美さんが就任して初めての大舞台とあって注目を集めていますが、
中田監督の試合中の指揮の様子がまた、話題を集めています。
中田監督は、試合中の作戦タイムのとき、選手に戦術の指示をしていません。
すべて、外国人コーチが行い、
監督は、その間、選手とコーチの円陣にも加わらず、外から見ているだけ。
そのため、あの外国人が監督みたいだとたくさんのファンが、ネットに投稿し、
話題になり、盛り上げっています。
その中田監督のスタンスは、戦略は監督、試合での戦術及び指導はコーチ。
と役割を分担しているのがよくわかります。
指導する人が何人もいて、それぞれ違うことを言えば、選手は混乱するだけです。
そのため、試合中の戦術と指導は一切、担当コーチに任せる。
それでいて、選手からの人望を集めている。
これは、なかなか、できることではありません。
中田監督の手腕に脱帽です。
■ サッカー編 ハリルホジッチ監督の選手起用が面白い
サッカーWカップ、アジア最終予選での、ハリルホジッチ監督の選手起用が
大きな話題になりました。
出場が決定する大一番のオーストラリア戦。
スターティングメンバーに浅野・井手口選手を起用し、
今まで日本代表の顔であった、本田・香川・岡崎選手をベンチ要員とする
博打とも思える手を打ち、多くのファンがネット上で非難の大合唱。
ところが、ふたを開けてみると、その非難の対象だった浅野・井手口が
見事なゴールで出場権をがっちりゲット。
ゴールと試合後のハリルホジッチ監督の感極まった様子。
また、してやったり!という歓喜の顔の映像が大きなインパクトを与えました。
また試合後、評論家の監督采配についてのコメントが試合前と激変し、
賞賛と喜びの声が嵐のように上がっていました。
そして、最終のサウジアラビア戦 0-1の敗戦を喫した日本代表。
この試合では、本田・岡崎を先発起用。
全く、いいところなく敗れたにも、かかわらず、監督の選手起用に対しての
非難はあまり上がっていません。
本田や岡崎、また香川とこれまで、日本代表を引っ張ってきたエースでも
相手チームに合わせた戦術に合わなければ、起用しないというハリルホジッチ監督の
強い決意にファンも納得しているからでしょう。
サッカーやラグビーもそうですが、試合が始まれば、監督が作戦上の指示を
出すことはほとんどできません。
サイドに立っていても、細かな指示を出すことは限界があるので、
ほとんど意味がありません。
ハーフタイムに試合の流れを見て、戦術の変更や確認を行いますが、
選手がロッカーに戻り、再度、フィールドの戻るまではわずかな時間ですから、
選手各人に細かな指示を出すことはほぼ、できません。
サッカーの監督の最も大事な枠割とは戦力分析と戦術の立案。
そして、戦術にあったトレーニングと選手起用です。
勝っているとき、負けているとき。
攻撃型のFWを投入して、攻めろ!の意思を示す。
守備要員のDFを投入し、守れの意思表示。
サッカーの監督の役割は、戦況に応じて、対策をとる。
すなわち、選手起用と采配が最も求められます。
ハリルホジッチ監督、本番もアット驚く采配を見せてください。
■ 野球編 SB工藤監督の選手起用と采配はお見事につきる
プロ野球も残り試合わずかになり、セ・パ両リーグとも
広島カープ、SBホークスのマジックが点灯し、
ほぼペナントの行方は決まったようです。
それにしても、カープ緒方・ホークス工藤監督の選手用兵がお見事につきます。
ここでは、筆者がホークスファンであることから、SBホークス工藤監督の
采配の見事さとプロ野球の監督の役割を考えてみます。
8/31日、SBvs日ハム戦。
日ハムは二刀流大谷翔平が満を持して登板。
メジャーのスカウトが大挙して視察に訪れた注目の一戦。
対する我がホークスは、対大谷対策として、大谷に相性の良い、
福田秀平を先発起用。
采配がズバリ当たり、ホームランをかっ飛ばした秀平がヒーローになり、
ネガティブコメントの多い、ネットファンの口をふさぎました。
そして、翌日の楽天戦。
先発は、勝ち頭のナオ東浜。
楽天助っ人アマダーが激高し、東浜に突進してきたとき。
真っ先に止めに入ったのが、秀平。
この日は、打撃ではノーヒットでしたが、守備と走塁、
また、身体を張って止めに行ったその勇気ある行動に
秀平選手への賞賛の嵐が巻き起こり、一躍秀平選手はヒーロです。
そんな、殊勲の秀平も翌日はベンチ要員。
次戦からは、左対策要員の慶三川島の活躍が続き、
建志明石、健太今宮、職人晃中村など、脇を固めるいぶし銀の
活躍が光っています。
主軸のギータやデスパ、マッチが打たなくても、
脇役の活躍が随所にみられ、アッという間に、楽天・西武を置いてけぼり。
この連勝中の工藤監督の選手起用と采配は、神業みたいに当たっていましたが、
この間、筆者が感銘を受けたのが、対楽天則本とSB和田の壮絶な投げ合いでの一コマ。
両投手譲らず、白熱の投手戦。
0-0で迎えた最終回。
ヒットで出塁した健太今宮を3番中村が送りバント。
2試合決勝打を放ち、好調の中村ということもあり、
ここは、晃の打撃に期待していたファンは、
まさかの送りバントにビックり、しかもワンアウト。
これが見事に当たり、ギータが敬遠、デスパがいいねの決勝打。
この時、監督は、藤本打撃コーチに
「バントでいいですか?」と聞いて決断したそうです。
ギータが敬遠されデスパと勝負することまで考えての、バント采配。
もし、失敗して負けていれば、避難ごうごうは免れません。
よくぞ、決断した工藤監督。
それにしても、コーチにバントでいいですかと聞いたエピソードには、笑いました。
工藤監督にとって、専門外の打撃に関しては、コーチの意見を聞く。
そして、選手がそのサインを忠実にこなす。
SBホークスが強いわけです。
達川ヘッドコーチが「このチームが毎年、優勝争いを行う理由が良くわかった」
というコメントも紹介されていましたが、
作戦コーチや専任コーチの意見を尊重する工藤監督の采配の柔軟さ。
いや、見事です。
野球の場合、投手の配球や攻撃、守備の指示など、1球ごとにベンチから、
サインが出ています。
その点が、サッカーやラグビーとの大きな違いです。
それでも、どの競技でも、監督の役割は、チームの戦力を把握し、
選手に合わせたトレーニングやチーム戦略を立てることが最も重要な責務。
チーム戦略を立てたら、指導・実行は各コーチや選手にゆだねる。
それができるのが良い監督の条件でしょう。
■ まとめ
監督は現場での最終意思決定者であることは、間違いありません。
しかし、チームの運営や管理などは、各専門部署があり、それらがうまく、
調和すると、強くて良いチームになります。
現場で選手の士気やムードを高めたり、高揚した選手を落ち着かせたり、
監督の役割は、試合を演出するプロヂューサーでもあります。
仕事や家庭を含め、人間関係をスムースにするために、スポーツチームの
監督は良いお手本になります。
そういった視点で、試合を見ていると、勝敗とは違って面白さが味わえ、
また参考になります。
涼しくなり、スポーツの秋を迎え
益々、各競技も白熱してくるでしょう。
存分にスポーツ観戦を楽しみましょう。
ということで、監督論はお終いです。